[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
やはりやってくれるな、周防監督。
起きてすぐ、レイトショーで観てきました、周防正行最新作「それでもボクはやってない」。
無駄なことは言いません。非常に観る価値のある映画です。あれが今の裁判の現状なんです。本当に、あんなにハンカチが手放せないとは思わなかった。監督がどれだけのことを調べ上げてこの映画制作にかかったのか、また何が監督をそうまでさせたのか、その気迫がこの映画の何でもないシーンからでもヒシヒシ伝わってきて、胸を強く打たれました。
俳優陣も実に素晴らしくて。本当に細かいところまで事実に基づいて作られているのでリアルなのは当たり前なんだけれど、いつもとなんら変わりのない日常の中に生きていて、おそらくこれからもそれが続いていくことが当たり前であっただろうに、いきなり駅のホームで少女にスーツの裾を掴まれたことから不条理まみれの生活の中に投げ込まれ、拘束され続けることになってしまう青年役。それは悲惨なくらいに加瀬亮に似合い過ぎていた。何故彼はあんなにも「腑に落ちない顔」というものが合うのだろう。もちろん無実の身で何ヶ月も拘束され、容疑者同然の扱いを受け続けるなんて「腑に落ちない」どころの騒ぎではないんだけど、本当に突然あんなことになったら、実際なんてもう「腑に落ちない顔」をするぐらいしか出来ないのかもなぁ、と思わせるくらい、実にリアルで素晴らしい「腑に落ちない顔」であった。
あと結構いいじゃん、と思ったのが、田中哲司。彼がさり気なく出ている作品はいくつか観ているんだけど、今回はなかなかグッとくる演技を見せていた。
「ひとつ屋根の下」で車椅子の上にいた頃とは、いまやあまりに別人の体格になってしまっている山本耕史も非常に良かった。彼が親友(主人公)を信じ続ける限り、支えている限り、誰が主人公を裁いたところで絶対に真の有罪になんかならない、という安心感が、彼の存在によってこの映画に暖かい光を差し込んでいたように思えた。
無駄なことは言わないと言いながら、色々書いちゃいました。でも本当に、冤罪事件とはとても恐ろしいことなんですよ。人の人生が平気でちょっとおかしなことになっちゃうんですよ。なのに、今の世の中ではいとも簡単に起きていることで。きっと何件も。結構いると思うんですよ、「ドラマとかで、何もやってない潔白の人が誤解されるシーンとか、もうもどかし過ぎて見ていられない!」という人。私もわりとそうなんですが。そういう人にも、是非とも観て欲しいです、コレは。そして大いに憤慨してもらいたい。大いに憤慨し、来るべき裁判員制度(※注)に向け、実際に自分が裁く側だったらどうするか、人が人を裁くということはどういうことなのか、考えてみてほしい。私も考えます。それは、無駄なことでは決してないと思います。
(※注)2009年より、衆議院議員選挙の有権者である国民の中から無作為に裁判員が選ばれ、刑事裁判に参加する制度。
あ、あと公式HPの「それボク的傍聴記」が異様に面白い。書いているのはただの映画宣伝マンらしいんだけど、それにしては文章が面白過ぎる。岡田あーみんや、さくらももこ的なセンスを彷彿とさせるような。只者じゃあないな、こやつ。